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聖岳の日帰り登山|沼平ゲートから茶臼岳と上河内岳を周回して聖沢へ(10月中旬)

 

北海道で暮らす私にとって、なかなか縁がなかった南アルプス。百名山を意識し始めたことをきっかけに、登ってみることにしました。

 

今回は私にとって百名山50座目の記念となる山歩き。10月にもかかわらず下界の気温は30℃にも達し、しかも一日中澄み渡る青い空。最高のコンディションのなか、10時間かかって到達した山頂から見える赤石岳に次の目標を見出せました。

 

歩行距離49km、17時間30分にもおよぶとは思ってもいませんでしたが、、、

 

深夜の沼平ゲートからまずは茶臼岳を目指して

畑薙大橋

 

聖岳は南アルプス南部に位置する標高3,013mの山。南アルプスにはこれより南に3,000m峰はなく、日本国内の3,000m峰21座の中では21番目の高さなんですって。

 

縦走路を除いては、東側の聖沢からのコースがメインで歩かれていて、その他には同じく東側にある椹島手前の東尾根からも登る方もいるみたい。西側は便ガ島からのコースもあります。

 

今回は、県道60号南アルプス公園線を北上し、畑薙第一ダムの沼平ゲートに駐車。深夜1時半から東股林道をおよそ30分歩き、茶臼岳登山口がある畑薙大吊橋を深夜2時に渡ります。

 

ウソッコ沢小屋

 

まずヤレヤレ峠を乗っ越して再び沢まで下ります。その辺りが事実上の登山口。長い準備運動です。

 

沢沿いに登山道が続いていますが、渓相が荒れ気味で吊橋の補修箇所なんかもあり、尾根の取り付き地点にあるウソッコ沢小屋までは慎重に進みます。

 

登山道で迎える日の出

 

横窪沢小屋の手前にも尾根を乗っ越す地形があり、横窪沢まで下りて渡渉したところに小屋があります。この付近ではヘッドライトと思われる光がたくさん見えたので、先行する登山者がいるのかな?と思いましたが、実は自分のヘッドライトの光が鹿の目に反射しているだけでした。

 

小屋を過ぎると本格的な登りに差し掛かり、樺段(標高2,200m)付近でやっと夜が明けました。

 

ここまでおよそ4時間の道のり。まだ主稜線に達していません。

 

茶臼小屋

 

登山道の傾斜が緩やかになり、稜線まであと少しという場面で突如現れる茶臼小屋。

 

主稜線の東側になるので、朝陽を浴びて金色に輝いていました。すぐ上にはテントスペースもあり、ここから光岳や聖岳を往復するには最適なベースかもって思いました。

 

上河内岳、聖岳を目指し、主稜線を行く

茶臼岳

 

主稜線に飛び出すと一気に視界に入ってくる南アルプスの山々。これから向かう上河内岳や聖岳はもちろん、遠くには先週登った中央アルプスや御嶽山まで見えました。

 

茶臼岳

 

せっかく来たので茶臼岳の山頂に寄り道。

 

上河内岳へと続く稜線の雰囲気がとっても柔らかくてステキ。これだから山はやめられないんですよね。

 

上河内岳

 

続いて二百名山の上河内岳へ。稜線上はとっても風が強くて、ウェアをかなり着込んでおります。私は寒さには強いほうですが、秋から冬にかけての季節はなるべくカラダを冷やさないように心がけていまして。カラダに負荷をかけることと負担をかけるのとではやっぱり意味が異なります。

 

それにしても上河内岳って、稜線の北側から見るのと南側から見るのとではかなり趣が異なりますね。

 

上河内岳

 

縦走路は上河内岳のピークを踏まないように付けられていますが、天気が良いので立ち寄ってみます。こういうところを面倒くさがってスルーしてしまうと、その後何年にもわたって後悔することが多いんですよね。

 

このルート上では富士山がずっと見えていますが、やっぱり奥聖と上河内岳から見るのがいい感じ。

 

上河内岳

 

南側の山並みの姿もここから見るのが一番好き。イザルガ岳や光岳、手前には易老岳や仁田岳、もちろんついさっき登った茶臼岳のピークも。

 

手に届きそうな距離なのに、今回は行けないのが惜しいですね。光岳には易老渡から登ろうと計画していたけれど、次回も茶臼岳登山口から登ってみたいなって思います。

 

聖岳

 

さていよいよメインイベントの聖岳へ。

 

今回の核心部はここでしょうか。聖平のコルまでおよそ530mも下って、さらに740mも登らないとなりません。南アルプスのスケール感はやっぱりハンパない。

 

まあ、それもそのはず。聖沢登山口から畑薙大吊橋までの周回(今回の反対コース)って、山のグレーティングでは体力度8(最高は10)×技術的難易度C(A〜E)なんですよね。2~3泊が適当ってされているのですから。

 

高山植物

 

10月も半ばになるのに、一部にはお花畑も。

 

「下るのイヤだなぁ」なんて思って意気消沈していただけに、本当に心が癒されました。

 

聖平

 

聖平まで下りたら仕切り直し。

 

「ひえーあそこまで登るんかい」って感じて見上げている私。カメラに背中を向けている時はいつもの笑顔ではありません。いや、笑っていたら気持ち悪いっしょ。

 

小聖

 

まずはおよそ1時間かかって小聖(・2662)へ。

 

行動開始からすでに9時間以上経過したうえ、暑くなってきてかなり消耗しております。水分は2.4リットル携行していたものの、節約しながら消費してきたこともあって肉体的なダメージが大きいです。

 

前聖

 

小聖からの最後の登りがきつかったけれど、何とか今日の終着地の前聖に到着。正面には赤石岳がドーンと存在感を示してかなり近くに見えるのですが、実際は大きく迂回するので長い道のりになります。

 

山頂到着時刻は11時30分。沼平ゲートから実に10時間の長旅でした。でも距離はまだ半分にも満たないんですよね。

 

行かなきゃもったいない奥聖

奥聖と富士山

 

ここもせっかく来たので奥聖へ寄っておくことにします。

 

奥聖から白蓬の頭を越えて椹島へと下る東尾根ルートがあることを実はこの段階で知らなかったのだからもったいない。知っていたらあと1時間以上は早く下山できていたかも。

 

奥聖

 

奥聖へは僅か15分くらいの距離。

 

主脈の見え具合もちょっと違うし、聖沢方向の紅葉も見事なんです。

 

富士山

 

手前の稜線上に忠実に付けられている踏み跡。これが東尾根なのだとか。

 

右奥にはひときわ高い富士山が目立ちますが、その左手前のピークが難関の二百名山、笊ヶ岳。

 

こうやって現地へ行ってみて、他の山を学ぶ。土地勘も付いて次の計画がしやすく効率的になる。これって一つの成長。そしてやがて飽きる。より上を目指して外の世界へ飛び出す。この繰り返しが趣味の世界の楽しいところ。

 

長~い下山と、沼平ゲートまでのランニング

クロスランナーパック15

 

さていよいよ下山開始。

 

それにしても今回もモンベルのクロスランナーパック15の容量でなんとか足りました。これ、通勤ランニングでも使っているんですが、背負い心地が良くて意外と荷物が入ります。

 

雨具上下にウィンドブラスト、ソフトシェル、さらにお守りのハードシェル、防寒テムレスと小物類、中に600㏄のペットボトルと行動食、左右のポケットに900㏄のペットボトルをやや強引に入れて満載って感じ。外側のアミアミのところにも大きなものを外付けできるので、残雪期の終盤から初冬までかなり使えます。

 

今年はアルチプラノパック20をメインで使ってきたものの、どちらも一長一短があり、だけどどちらも素晴らしい逸品。

 

聖平

 

再び聖平まで700mも下り、なんだか低山を一つやっつけ終わったかような達成感。

 

時刻はすでに13時40分。いくら時間制限がないとは言っても、空が明るいうちにせめて登山口までは下りたいって思います。

 

聖沢

 

聖沢への下山ルートは序盤こそ一級国道の様相でしたが、その後は悪天候によって被害を受けたためか、損傷している箇所が多く、最後まで気を抜けない状況でした。

 

特に沢地形を大きく高捲きしている箇所も多く、高度感は感じないけれど一歩足を踏み外せば谷底まで真っ逆さまなんて危険箇所も多いと感じました。

 

聖沢登山口

 

聖沢の登山口までは本当に長く感じられ、かなりペースを上げたつもりでも、下山完了は17時と遅め。

 

ここから沼平ゲートまでの距離はおよそ14km。どうやらここまで自転車で来るのが一般的なようですね。

 

東股林道

 

沼平ゲートまでの道中でまた日が暮れて、再びヘッドライトの出番。こうなると1日がとても長く感じられます。

 

下り基調の場所ではキロ5分半くらいのペースで走り、登りに差し掛かればウォーキング。

その繰り返しで沼平ゲートに19時ちょうどに到着しました。

 

今年はかなり山歩きをしているほうだと思いますが、今回の行動時間はおよそ17時間30分となり、今年最もボリューム感があった山行のように感じました。

 

でもね、一番辛いのはこの後の静岡市までの運転なの。お風呂に入りたいし、お腹は空いたし、飲み物も飲みたい。だけどどれもおあずけ状態で延々とくねくね道路を運転しないとならないんだから。

 

Peach

 

静岡市に入って最初に見つけたコンビニでカツカレーを食べて、ネカフェでシャワーを浴びて仮眠を取り、翌朝はセントレアまで一般道で6時間のドライブ。空港でビールを飲んで夜の飛行機で札幌へ帰ります。

 

かくして10月に入ってから2週連続で通った木曽駒ヶ岳、御嶽山、聖岳はすべて天気に恵まれ、私にとってかなり満足感が高い2021年の夏山シーズンを終えることができました。