今回、ハノイではブルーホテルという宿に4泊している。いつもはホアンキエム湖の北に位置する旧市街のホテルに泊まるが、今年のハノイマラソンは統一公園がスタート会場なので、直前になってこのホテルに決めた。
ハノイではいつも日本円にして5千円未満の3つ星ホテルに泊まる。ベトナムに限らず、バンコクやクアラルンプールでもこの価格レンジのホテルにするので、行ったことがある方であれば、雰囲気がだいたいお分かりいただけると思う。
ここは家族経営なのかどうか分からないけれど、スタッフは朝から晩までいつも同じメンバーだ。まず彼らはとても礼儀正しい。かしこまっている雰囲気ではなく、真心をもって接してくれているという感じだ。とにかくいい人たちなのだ。
予約時、なぜか日本人による口コミが多かったので少し気になっていたんだけど、確かに随所に日本語が併記されていて、朝食のメニューにも日本食が提供される。周囲に日本食の飲食店がある地域とは言え、それとはあまり関係なさそうだ。とにかく理由はよく分からないが、日本に対してとても好意的に感じている気がする。
1日目の朝食会場では、最初にメニューを見せてくれて日本食かコンチネンタルかを選ばせてくれた。でもメニューを見せるなり、日本食の方を指差して笑顔でこちらを見るので、日本食しか用意できなかったのかもしれない。メニューは親子とじと白米、味噌汁にサラダ、ヤクルト、ヨーグルト、それにフルーツだった。
白米は普通に日本のご飯だったし、炊き方も素晴らしい。味噌汁も私が作るよりはるかに美味しい。サラダにかかっているドレッシングも胡麻ドレッシングときた。なかなかやるものである。
2日目は問答無用で日本食が提供された。隅っこのテーブルでスタッフも朝食をとっていたが、彼らはフォーを食べている。他にはお客がいない。
3日目は日本食ではなく、ご当地のブンチャーが提供された。分かりやすく言えば、米粉麺のつけ麺だ。私は米粉麺の商品開発を長年続けてきたので、何度か食べたことがあった。
提供時、オーナーと思われる女性がやってきて、食べ方を教えてくれる。ブンチャーだねと私が言うと、そうそうブンチャーだよって。お互い笑顔である。では彼女が日本語を話せるかと言えば、おいしいとありがとう以外は分からないようであった。私もカムンしか分からない。
朝食会場をあとにするとき、挨拶をする。彼女はありがとう、私はカムン、なぜかお互いタイ人のように胸の前で手のひらを合わせてお辞儀をする。
旅は言葉が通じなくてもやっていける。コミュニケーションを取ろうとするかどうか、それだけである。そしてたいていの人は思っているよりずっと優しい。
ちなみに笑顔は武器になる。瞬間的に笑顔を作る。これは日頃から訓練が必要だ。
さて最終日の朝食は何が出てくるだろう。明日は3時出走でマラソンを走るので、6時間半後にホテルに帰れば朝食にはまだ間に合うはずだ。頑張って走ろう。
ホテルの話に戻す。
とにかくおもてなし感が半端ない。日本人の琴線に触れることがたくさんある。
例えば、ハウスキーピング。
外出して帰ると、ベッドメーキングがされている。私はシーツ交換やタオルの交換などあまり必要としないのだが、ゴミの回収、特にトイレのゴミは毎日回収してほしいので、清掃してもらっている。だからと言って清掃してもらえなくても文句はない。多くの日本人が求めるサービスは、カスハラレベルだと思っているくらいだ。
ベッドメイクとタオル交換、ゴミの処分だけでも十分満足だが、なんと机の上に無造作に置いてあった充電ケーブルがヘビのように優しく巻かれているじゃないか。しかも2セットとも。
さらに耳栓もきれいに立てて並べてあり、横たえたザックの上に置いてあった長袖シャツは、しっかりと畳んで隣の椅子の上に置かれている。いや、私だって畳んでおいたんだけど、お店のクオリティで畳み直してくれているのだ。
だからと言って荷物の何かが盗まれているわけでもない。純粋な真心で成された仕事なのだ。
さすがにそこまでされては恐縮なので、翌日は全てザックの中にまとめて外出した。
その他には、部屋にティッシュが備え付けられていたり、備品類のほとんどが日本のメーカーのものだったり、バスタブがあったり、コンビニやデパートが近かったりなど、日本人の琴線に触れる点が数多くある。
ということでこれからハノイへ来る際は、ここを定宿にすることに決めた。
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なんだかんだ言ってまだ病み上がりの私である。明日に備えて、今日はコーヒーもビールも飲まず、3日連続でバインミーだけを食べて早めに休むことにしよう。