先週末に3泊4日の旅程で釜山と大邱を旅行してきた。出発当日の朝から喉が痛く、風邪をひいたらしい。それもあって、いつも以上に中身がない旅だったように思う。
その一方で、弱っている時は内面の感覚が研ぎ澄まされ、自分と深く向き合ったり、思考を巡らせたりする良い機会でもある。
帰国後も体調不良なまま土曜まで仕事して、やっとブログを書けた。旅を振り返りながら、その時その時で感じたことをストレートに書いていきたいと思う。
釜山到着時から大雨

現地の天候が悪くて機体の揺れが激しく、ガクンと高度を落とした際には機内で悲鳴が聞こえるほどだった。
釜山に到着すると横殴りの雨。タラップを下りる途中でシャツが激しく濡れる。そんな場面はめったにないので、これはチャンスとばかりに動画を撮りながら下りる。
ちなみに金海空港は軍民共用空港なので、撮影には十分注意したい。
入国審査にかなり時間がかかる。久しぶりに数十分単位で並んだように思う。

今回は東横イン釜山中央に3連泊。ここに泊まるのは8年ぶりだろうか。1泊5千円程度で朝食付き。市内では最も安価なビジネスホテルだと思う。
釜山駅と中央駅のちょうど中間くらいあって、中央駅の17番出口から徒歩で数分。雨が降っているのでこんな距離でも遠く感じた。
思えば私の海外旅行は、雨にあたることが少ない。

東横インだけあって、チェックイン時のスタッフとの会話も日本語、案内表示も日本語併記。
そもそも韓国ほど日本語併記が多い国はないように思う。日本人にとって最も歩きやすい土地ではないだろうか。

シャワーを浴びたら、隣のGS25で買ってきたビール2本を飲む。
明らかに風邪気味でビールが美味しいと思わない。なのに2本とも飲んでしまうところが、きっとアルコール依存症予備軍なのだろう。この行動パターンをどこかのタイミングで断ち切りたいと思う。
釜山から大邱へ行ってみる

深夜の雨音が騒がしく感じたが、2日目は朝から晴れた。
計画では午前中に慶州へ行こうと思っていた。でも、気乗りしなくて大邱だけにした。こういう気ままに旅行できるところがひとり旅の魅力なのだが、私がひとり旅を好む理由はそれだけではない。
最たる理由は、私が内向型人間だからだ。だからこうしてひとりでできることに心が向かうのだと思う。
さて、東大邱までKTXで約50分。チケットはトリップドットコムで購入したんだけど、Korailのウェブサイトで直接購入すれば良かったかも。そう、手数料の話。

大邱に来てもやることがなく、6年前に来たときの記憶を辿って、東大邱駅直結の新世界百貨店、七星市場、半月堂周辺、西門市場を巡ってみる。
自称大邱好きな私なのに、まったくワクワクを感じない。体調不良のためか、それとも完全に飽きたのだろうか。
パンデミック前の2019年頃、韓国へ遊びに来ることにすでにマンネリを感じていた。パンデミック後の23年と24年にソウルと釜山へ1度ずつ来たが、その時は比較的楽しんでいたように思う。でも今回は違う。もう、来なくてもいいなと思いながら旅をしている。
思えば今年に入って訪れた旅先は、どこも初めて行く場所やしばらく訪問していない場所ばかりだった。初めて行く場所と何度も訪れる場所へ行くときとでは、やる事や視点そのものを変えなければ飽きるのは当然のことだ。これは山歩きをしていても同じことが言えると思う。

最後に訪れた西門市場はとても混んでいた。韓国はちょうど3連休だからだろうか。
こうして街歩きをしていると、部分的に過去に訪れたときの記憶が蘇ってくる。
そう言えば最近寝ている時の夢の中でも、大昔の記憶が断片的に思い出されることがある。老化現象の一つなのかもしれない。
年齢とともに体は衰える。体力にはそこそこの自信があっても、近いものが見えずらい、気物忘れが激しくなる、肌に艶がない、シミが出てくるなど、節々に変化が認められるものだ。それを悲観したところで意味はなくて、むしろそういう変化と付き合いながら旅を続けたいと思う。

あんまり楽しくないなと感じながら街歩きをしていたら、16時前には大邱を後にしていた。滞在時間は5時間に満たなかったと思う。
体調不良とマンネリの他に、気分が乗らないもう一つの理由がある。
日本を出てから現地の環境に慣れるまで丸1日かかること。どうも私は初日から活発に動けないのだ。勢いが付かない。安全機能みたいなものが働いて、スムーズに活動できない気がする。
きのうは夜遅くに着いたから、今日がまさにその1日目にあたる。

東大邱から釜山への帰りはITXにて。
時間はちょっとかかるが、京釜高速線を走るKTXのようにトンネルばかりではなく、景色を見ながら移動を楽しめるところがいい。車両もこちらのほうが快適で、そしてお値段もちょっと安い。
私の旅はこういう鉄道やバスの移動が多い。1日中歩きっぱなしだと疲れるので、こういった移動時間は休憩にちょうど良い。それでも毎日4万歩くらい歩くから、旅は健康維持に最適だ。
ミッフィーカフェ釜山へ行ってみた

17時過ぎ、明日行こうと思っていたミッフィーカフェ釜山へ行くことにした。場所はヨンド(影島)にあり、チャガルチ辺りから直線距離で2kmくらいしか無さそうに見える。
NAVERマップで調べると、南浦のロッテ百貨店光復の反対側から9番のバスに乗る、と表示された。
大邱は汗をかくほどの陽気だったのに、釜山ではダウンを着ている人がいるくらい肌寒い。いったんホテルに戻って着替えてくるべきだった。

地図で見る限り、1時間くらい歩けば行けそうな距離。でも心からバスで来て良かったと思えるくらい、その場所は狭くて曲がりくねった坂道の上にあった。
9番のバスで来ると、バス停のすぐ目の前にお目当てのカフェがある。数年前は別のカフェがあった建物からミッフィーカフェに変わったのだそう。

カフェには入らず、奥にあるショップだけ訪問。お目当ては釜山限定のぬいぐるみの購入だったが、左の白いタイプは売り切れ。右の아줌마(アジュンマ)ミッフィーのみ在庫があった。
45,000ウォン(≒4,664円)に躊躇したのもあるが、先日購入した台湾スタバミッフィーほど欲しいと感じず、今日のところは一度引きあげることにした。どうしても欲しくなれば、また明日来ればよい。
それにどんなに大好きなものあっても、実用的でなものを所有し続けるのはムダになる。ぬいぐるみはその最たるものだ。
何事も足るを知る、である。
私の放浪癖に近いムダ旅も、人生のどこかで線引きをしなければ。

滞在時間は約10分。再びバスに乗って南浦へ戻る。
帰りは影島区で運行している「影島区5番」という小型のマイクロバスだった。このバスもミッフィーカフェの目の前のバス停に停まり、ロッテ百貨店光復前で下車できる。
ちなみにこのマイクロバスでは、多くの乗客は下車時にICカードをタッチしない。釜山の公共交通では乗り継ぎ割引があるので、私たち旅行者は下車時もタッチしたほうがいい。
タップした際に流れる音声メッセージを調べてみると、
- 승차입니다(スンチャイムニダ)」=乗車です
- 하차입니다(ハチャイムニダ)=下車です
- 환승입니다(ファンスンイムニダ)=乗り換えです
なのだそう。
それと釜山とソウルの地下鉄では、「ドアが閉まります」的なアナウンスが少し違う。これも調べてみると、
- プサン:출입문이 닫힙니다(チュリンムニ タッチムニダ/ドアが閉まります)
- ソウル:출입문을 닫겠습니다(チュリンムヌル タッケッスムニダ/ドアを閉めます)
の違いなのだそうだ。
ハングルを読めるようになりたいと思ったことはあるが、朝鮮語そのものを覚えたいと思えない。うーん、どうしてだろう?

夜は食事を兼ねて南浦へ飲みに行く。土曜の夜ということもあって、半年前に来た時より街は賑やか。
ひとり旅の唯一の欠点は、一緒に食事をする相手がいないことだ。
語り相手が欲しいわけではない。焼き肉や火鍋、居酒屋などのお店を利用しずらいことが理由だ。
ふらっと入店した飲食店で注文しても、量が2人前サイズだったりすることもしばしば。いろんな料理を食べてみたいときも、一人だと注文点数が限られてしまいがちだ。

結局、昨年行ったクラフトビールのお店に入る。
フライドポテトをつまみに、IPAとアンバーの2杯で2,545円。夜遅くにジャンクではあるが、昼食を抜いたようなもので1日の摂取カロリーとしては許容範囲だろう。
金井山城再訪

翌日。ホテルで朝食を済ませてから通勤ランニングスタイルで地下鉄に乗る。今日は金井山城へ行く予定。
温泉場駅で下車し、駅前のバス停から203系統のバスに乗り継ぐ。6年前に来た時はここから徒歩でアプローチした記憶がある。今回はバスで稜線近くまでショートカットすることにした。

終点の竹田マウルで降りればいいと思って油断していたら、バスに乗っていた登山者たちは途中の峠で降りていった。バスはそこから山道をグングン下りていく。しまった。
停留所を2~3過ぎたあたりの集落でアジュンマたちと一緒に下車し、NEVERマップとヤマレコの海外対応地図で現在地を確認、最短ルートで稜線へたどり着けそうなルートを探す。
つい10年くらい前であれば、言葉の壁を乗り越えながら身振り手振りで誰かに聞かないと詰んだだろう。でも今はスマホの地図でナビしてもらえるし、Googleのカメラで案内看板の翻訳もできる。ボイストラで実際に会話しながら通訳も可能だ。テクノロジーの進化と共に旅のスタイルも大きく変化した。
日本国内でもインバウンドがこんな場所、こんなお店にも来るの?って場面に出くわした経験があると思う。それもテクノロジーの進化とSNSによる情報共有、それとAIを活用しているためだろう。

金井山城は稜線上に城壁と登山道がある。道を進めば最高峰の姑堂峰に着く。
梵魚寺からのハイキングコースと交わる北門まで進むと、人が一気に増える。
ここでMTBの集団のひとりから、写真を撮ってくださいと頼まれる。ひとり旅ではよくあることなので快く引き受ける。でも、シャッターを押す瞬間、掛け声に悩む。韓国ではなんて言うのだろうか?
日本なら「ハイ、チーズ」、英語なら「セイ、チーズ」、中国なら「イー、アル、サン」。
では韓国では?「キムチ」だったか?とか悩みながら、無言でシャッターを押す。相手も私が韓国人でないことをすでに分かっていたので、特に注文はなし。最後に笑顔を交わせばすべてオッケーだ。
ちなみに韓国で1・2・3は「하나, 둘, 셋/ハナ、トゥル、セッ」だそうだ。

多くの人が目的地とする姑堂峰。標高は801mしかないのでここからの景色は山岳風景とは言い難い。しかし周囲を遮るものがないので眺めはいい。
日曜日で3連休の中日ということもあり、多くのハイカーで賑わっていた。意外と外国人も少なくない。
韓国旅行と言えば、エンタメ・グルメ・ショッピングが定番のようだけど、自然派の旅人にはこういう場所を訪れるのも悪くないのではないか。

北門から梵魚寺へ下山する。
梵魚寺は実に約1,300年の歴史があるそうだ。豊臣秀吉の朝鮮出兵で一度焼失し、17世紀になって再建されたのが今の姿なのだという。
ここから地下鉄の駅までバスに乗ってもいいし、30分以上かけて徒歩で下ってもいい。私は今回も後者を選ぶ。

梵魚寺駅の7番出口の前にテラス席併設のGS25があったので、ここでビール休憩をすることにした。ホント、アル中予備軍。
公共交通で山に行くときにしかできない贅沢。缶ビール1缶で幸せになれるんだから、運動×ビールは最高。
海雲台砂祭りへ

ほろ酔い気分で海雲台へ行ってみた。山に登ったあとは海辺を歩きたいと思ったのがその動機。

海辺に出る前にこの通りへ。まあ、お約束。

海雲台砂祭りがちょうど開催中で、多くの人で賑わっていた。
2017年5月28日に来た時もちょうど砂祭りの期間中で、どうも私はこの祭りに縁があるらしい。

規模はそれほど大きくないものの、一つ一つの作品レベルはとても高い。一度は見てみる価値があると思う。
地元札幌では毎年雪まつりが開催されている。雪像に比べて砂像のほうが精巧な表現ができるようだし、陰影も付きやすいと感じる。
西面徘徊からクラフトビールへ

海雲台からいったんホテルへ戻り、19時頃になってから釜田へ。
釜田市場でこの時間帯に営業しているのは飲食店くらいだろうか。西面町方面へ歩く。

西面町は交差点を中心にザックリ言えば、北に向かって四象限の第1象限と第3象限は夜の街、第4象限は飲食街、第2象限は若者の街という住み分けがされているようだ。
テキトーに歩いているだけでも楽しい。

南浦へ移動し、昨日とは別のクラフトビールのお店へ。
西面でなく南浦で飲む理由は、単純にホテルまで徒歩圏内だから。

ビールはIPAとドイツのホワイトビールの2杯。
今日もお昼を抜いたので、チキンボールと無料のポップコーンとジャンクだけど許そう。
このお店も空いていて感じが良いので、また来たい。
朝ランで甘川文化村

最終日。
帰国便のジンエアー札幌行きは13時50分出発と遅めなので、午前中も行動する。
10時のチェックアウトまで時間があるので、朝食を済ませてから通勤ランニングスタイルで甘川文化村へ。本来は地下鉄で土城駅まで行ってから坂道を登っていくのだけど、ホテルから土城駅までの区間もそれほど遠くないので、ホテルから走っていくことにした。

始めた来た時はワー!って喜んだものだ。でも、2回目、3回目となると熱量はグンと下がる。そして見方も少し変わって来る。ここが旅の面白いところでもある。
もともとこの付近は戦争難民が作ったバラックが始まりだという。
土城駅から来るとき、いつもより1本内側の道を歩いて分かったんだけど、住民には高齢者が多い。カラフルに見える壁面とは裏腹に家屋そのものは老朽化が進んでいることに気付く。恋愛と一緒、最初は外見に目を奪われがちだが、付き合いが長くなれば中身にも注意が向く。

甘川文化村からホテルへの帰り道、飲み屋街や国際市場の裏通りを歩いてみる。
BIFF広場周辺の繁華街を歩くのが定番だけど、時間帯を変えて一歩中へ入ってみるとローカルの生活圏にグッと近付いた気になれる。そしてこの街の全体像が見えてくる。

ホテルへ戻る前にスターバックスへ。私の海外旅ではずいぶんと定番になってきた。
カプチーノベンティーサイズを注文して、初めてマグカップで提供された。これは驚き!
ホッと一息ついたら9時30分にホテルへ戻り、シャワーを浴びて10時にチェックアウト。空港へ行くにはまだ早い。

最後はチャガルチの市場を歩くことにした。
日本人は魚好きと言われるわりには魚離れが進んでいるそうだ。韓国はどうなのだろう?
日本人の魚離れは、単純に調理の簡便化が進んで面倒なことをしなくなったことや、可食部以外の残渣処理の問題などがその要因のように思える。
私自身も日々の料理に時間をかけるのは、時間のムダだと思っているタイプだ。でもたまにはそういう不合理を楽しめる余裕を持ちたいと反省する。魚市場を歩きながらそんなことを感じた。

チャガルチを散歩したら空港へ向かう。
釜山を13時50分の定刻に出発しても、16時頃には札幌に着く。本当に国内旅行の感覚で行けるのがいい。
一方で自分自身にとってはマンネリ化していて、ワクワクを感じなくなってきている。これは今後の課題だと思う。
その解決策は、観光客としてお決まりの場所を訪れるスタイルを脱却することにあると思う。歩くことをテーマにした場合、釜山はもっと楽しいのではないか。釜山は海が近いうえに、山がちな場所も多い。これと平地部分を組み合わせれば、マラニック感覚でプチ冒険が楽しめそうだ。
韓国も日本も歩道や信号が整備されていて歩く人に優しい。
歩行者が安心して歩けるような街はアジア圏には意外と少ない。歩道に車やバイクが乗り上げていたり、どうやって大通りの反対側に渡ればいいのか変わらなかったり、そもそも歩くには不快な気温や湿度だったり。
そういったことを考慮すると、屋外で活動するのに快適なこの時期に韓国旅をしてみるのも良さそうだ。
私の韓国旅は、こうして次のステージに移行しようとしている。9月か10月あたり、気が向いたらまた行こう。