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廃れていく登山道を何とかしたい!という思い

武利岳から武華山

今まで登ったことがない山を集中してやろうと思い、2週間前に武華山と武利岳、支湧別岳に登ってみた。

 

直前まで支湧別岳ではなくてウェンシリに登る計画だったが、石北峠から意外と遠いので支湧別にした。

 

そこで感じたことと、沸き上がる思いについて書いてみたい。

 

林道が被災するという問題

支湧別岳

さて、山行記録はヤマレコにアップしているので、このブログでは詳しく触れないことにする。

 

今回のブログのテーマは登山道の荒廃と、維持について考えてみたい。

 

武華山、武利岳、支湧別岳のいずれにも立派な登山道があるにもかかわらず、大雨によって林道の一部が不通になっている。

 

武利岳は丸瀬布方面からの本来の登山道ではなく、もともとは存在しなかった武華山からの縦走路を利用する人が圧倒的に多いようだ。

 

武華山も武利岳もそれぞれ北海道百名山にリストアップされていることもあり、一定の登山者がいる。

 

しかし支湧別岳を訪れる登山者は、おそらく一桁くらい少ないのではないだろうか。

 

今後も林道の修復作業が行われない限り、登山者が増えることはないだろう。 

 

登山道が荒廃するということ

さて、登山道の荒廃について考えてみると、登山者が多過ぎて環境負荷が大きい場合と、逆に登山者が少なすぎて廃れるという二つのケースがあると思う。

 

北海道の山で、登山者が多くて土砂が流出したり、踏みつけによって植生が傷んだりする箇所は、表大雪や道央圏など特定の山域に限られていると思われる。

 

一方、登山者が少ない日高山脈や道北、道東、道南では、すでに廃道になってしまった登山道も少なくない。

 

せっかく作られた道なのに、利用者が少ないことによって廃れゆくのは寂しい。登山ブームが起きて爆発的に登山人口が増えない限り、この傾向は続くと思う。

 

こんなところにも、少子高齢化と過疎の問題が関係してくるわけだ。

 

伏美岳、西クマネシリ、ウペペサンケ、狩場山、ポンヤオロマップなど、思いつくだけでもこういう山々がたくさんある。 

 

登山道の維持

ここで登山道の維持に関して考えてみたい。

 

たくさんの人が歩くことで道がえぐられたり、踏みつけられた植生を回復させるのは専門的な技術が必要になるだろう。

 

問題点はオーバーユースなのだから、補修や整備のための予算配分と人材確保、迂回ルートの設定、入山料の徴収、入山人数の制限などができれば、予防措置を講じることができると思う。環境保護や登山者の安全確保など大義名分がある。

 

アポイ岳や崕山などの好事例もある。

 

しかし、訪れる人が少なくて廃道化が進んでいくことに関しては、現実的には対策が難しいように思う。利用者がいないところに、公的予算を配分する理由は見当たらない。

  

今までこういった活動は、地元の山岳会によって成り立っていたと聞くが、ここにも時代の変化による衰退が見て取れる。 

 

個人レベルでできることはないか?

山岳会のような組織的な活動ではなくとも、個人レベルでもできることがないだろうか?と支湧別岳に登りながら考えてみた。

 

私は体力的に余力があるほうなので、これまでは速く遠くへというスタイルを追求してきたきらいがあった。

 

平日は仕事をしているから、休日前夜は深夜からの長距離移動と山行、早く帰って帰宅後の片づけや洗濯、写真や動画の整理、SNSへのアップやブログの更新、お風呂に入ってビールを飲んで早めに就寝するなど、休日なのに時間効率を追い求めてきたように思う。

 

そこには一切の無駄がない。

 

しかし、フィールドという公共の場で遊ばせてもらっていながら、あまりにも自分本位なことにどうもスッキリしなかった。

 

そのため、登山道やアプローチに関する最新情報を発信するということをやってみた。このブログも力不足ながらその役割を担えると思って続けてきた。

 

しかし、スマートフォンが普及した現在では、多くの人々がその役割を担っているので、もっと別の活動が必要だと思う。

 

それにこれだけたくさんの山で遊ばせてもらった私には、役不足だと思う。

 

そこで、登山道の整備を思いついた。

 

個人レベルでできそうなことと言えば、

  1. 倒木の一部を処理して歩きやすくする。
  2. 笹を刈る。
  3. 迷いやすい箇所にテープで表示する。
  4. 古くなった山頂標識を付け替える、新たに設置する。
  5. 渡渉点で靴を濡らさないように、大きめの石を設置する。

こんなことだろうか。

 

若い男性ならそれほど苦労せずに越えられる倒木であっても、小柄な女性や年配の登山者であれば、かなり苦労することがある。

 

障害物を30秒で通過できる人と、3分かかって通過する人とでは、往復で5分の差がつくことになる。歩行速度は心肺機能が重視されがちだが、障害通過の技術やバランス感覚も密接に関連している。

 

下山が遅くなれば事故に至るリスクも高まる。

 

道迷いも深刻な問題だ。鹿道が発達して登山道との見分けがつきにくかったり、被災した林道部分でも起こり得る。10分とか20分とかそういう時間単位でロスが生じるし、最悪の場合は遭難に至るケースも否定できない。

 

「GPSがある時代になぜ?」とか、「自己責任でしょ」みたいな論調は、私には強者の理論だと思う。もっとすべての人に寄り添う必要がある。登山は大人だけの遊びではない。子どもたちにも気軽に登れる山にしたい。

 

それと最近はヒグマとの遭遇リスクばかりが問題視されるが、林道や登山道はヒグマのような動物ではない。人間の手で整備さえすれば事故は回避できる。

 

ただ、倒木の処理や笹刈りなどであっても、勝手に行うのは法的なリスクが残る。

 

またベテランの登山愛好者には、自然に手を加えることを良しと思わない層が一定数いることも分かっている。どんな活動も賛成と反対があって成り立っているから、これは受け入れるしかない。

 

いまの自分は登山道整備の技術を持ち合わせていないので、実践と学びを繰り返しながら習得できればと思う。そこにはきっと成長の喜びもあるだろう。

  

こういった草の根的な活動でも、やる人が増えれば5年、10年できっと成果が出る。

 

ペテガリの東尾根が快適に歩けるようになった、みたいな将来を夢見て、自分にできることを少しずつしていきたい。