伏美岳・ピパイロ岳(伏美小屋)|残雪の北日高を日帰り登山

ピパイロ岳

 

ピパイロ岳は、北日高の主稜線のピークの一つで、遠くから眺めると台形の山容なのでよくわかります。無雪期の夏道ルートでも伏美岳を経由するため、日帰りでも通常10時間以上を要します。山中で1泊するのであれば、水場のコルが適していますが、せっかく1泊するのであれば、1967峰へも足を延ばしたいところです。

 

また、モルゲンロートの日高山脈を楽しむのであれば、伏美岳の山頂かピパイロ岳の山頂でテントを張るのがいいでしょう。いずれにせよ、夏であれば日帰りが十分可能な山ですので、重いテント装備を担いで急登を登り下りするのでなく、必要最低限の装備で日帰りした方がカラダへの負担も少なくて済むでしょう。

 

この記事では、6月上旬に伏美小屋で前泊し、早立ちでピパイロ岳に登り、日帰りで下山することを想定しています。

 

みなさんも残雪の国境稜線の山並みを眺めてみませんか。

 

伏美小屋に前泊し、早立ちして山頂を目指す

伏美小屋

 

伏美岳の登山口へは、上美生からトムラウシ林道に入り未舗装路を走るのですが、結構な距離があるため、深夜早朝の通過はお勧めできません。できれば、伏美小屋で泊まるか、登山口で車中泊をするのがよいでしょう。

 

この記事を更新している2018年2月現在では、トムラウシ林道は通行止めになっており、しばらく復旧の目途は立っていません。理由は2016年の台風と大雨によるもので、これより北の芽室岳、南の十勝幌尻岳でも、大きな被害が出ております。

 

伏美小屋は小さな山小屋ですが、登山口からも近く、水場が併設されています。ただ、深夜に小動物が走り回って物音がすることから、ネズミがいることも考えられます。

 

伏美岳

 

6月上旬は、朝3時くらいには明るくなり始めるので、4時には出発したいところです。小屋の中は真っ暗なので、寝坊しないように注意が必要です。 

 

伏美岳

 

背後から朝陽を浴びて、ムラサキヤシオが咲く登山道を山頂へ向かって登っていきます。

 

伏美岳

 

次第に植生がまばらになり、傾斜が緩やかになるとまもなく伏美岳の山頂です。

 

7合目を過ぎた辺りから多くの山々が見え始めています。

 

伏美岳

 

エサオマントッタベツ岳から十勝幌尻岳への支稜線の奥に、国境稜線のカムイエクウチカウシ山、標高点・1853(通称「ピラミッド峰」)、標高点・1855(通称「シュンベツ岳」)の頭が見えています。

 

伏美岳

 

山頂付近は爽やかで開放感があります。コースタイムでは登山口から約3時間とありますが、日高の山々ではコンディションや担いでいる重量によって、かなりブレが生じやすいので注意が必要です。

 

伏美岳

 

手前に妙敷山(おしきやま)と奥に十勝幌尻岳。札内岳の左奥にはペテガリの東尾根が見え、さらに目視では確認できませんが、東尾根の奥にはソエマツ岳やピリカヌプリと続きます。

 

伏美岳

 

伏美岳の山頂は、北日高の展望台と称せられるほどの景観です。国境稜線上はどこからでも素晴らしい山並みが広がっているのですが、ちょうど伏美岳がその入り口となっていることから、印象が強いのでしょう。

 

朝4時に出発しても7時くらい。まだまだ朝早いと思いがちですが、ピパイロ岳を安全に日帰りするには、このくらいの余裕を持ちたいですね。

 

正面には幌尻岳、戸蔦別岳、北戸蔦別岳の「御三方」が見えています。

 

伏美岳

 

こちらはややマニアックですが、神威岳の西に約1.7km離れた国境稜線上の1780mピークと、その奥に見えるイドンナップ岳。

 

ちょっと自信ないですが、おそらく間違いないでしょう。

 

伏美岳からピパイロ岳までが核心部

ピパイロ岳

 

伏美岳からは一気に高度を下げ、最終的には水場のコルまで標高差250mを下ります。以前はかなり荒廃していた印象を受けましたが、6月初旬だからでしょうか、とてもスッキリとしていて歩きやすいです。

 

ピパイロ岳

 

稜線上にまだ若干の雪が残っていると、このように雪の上を歩くことができて楽ですね。

 

水場のコル

 

水場のコルのテン場は1段高くなっているので、水が溜ることはないでしょう。実際、雨の日に泊まったことがありますが、まったく問題ありませんでした。

 

水場のコル

 

水場への下り口。マーキングがしてあります。残雪期はわざわざ水を採りに下りる必要がないのでいいですね。

 

水場のコル

 

水場のコルまで下ると、今度はいよいよピパイロ岳への登りに差し掛かります。

 

この付近は特に北側に雪がびっしり残ています。残雪は下りや平地では楽ですが、登りでは意外と疲れるものです。

 

水場のコル

 

標高点・1546と・1542の中間付近。この辺りも北側の雪面を繋いでいきます。

 

ピパイロ岳

 

1850m付近まで北側の雪付斜面を登りきると、最後はピパイロ岳ピークへのハイマツ帯。

 

キバナシャクナゲ

 

ピパイロ岳の山頂直下は両脇にキバナシャクナゲが群生しています。ヴィクトリーロードというイメージ。

 

ピパイロ山頂から1967峰の眺めが素晴らしい

ピパイロ岳

 

ピパイロ岳の山頂からは、西の肩へ続く稜線と1967峰を見ることができます。1967峰は日高山脈ではカムイエクウチカウシ山に次ぐ第3峰で、ここまで登らないと見えません。またピパイロ岳から見る1967峰が最も優しい山容をしており、ここから見る価値があります。

 

ピパイロ岳

 

西の肩へと続く稜線。ここでテン泊する方もいるようですね。

 

ピパイロ岳

 

伏美岳から見る眺めより、かなり近くに見えます。

 

ピパイロ岳

 

約7km離れたところにはチロロ岳と西峰。60km以上彼方の芦別岳と夕張岳も眺められます。

 

ピパイロ岳

 

こちらは十勝連峰の山並み。北日高の沙流岳は標高点・1653の裏手に隠れています。

 

ピパイロ岳

 

こちらは南側の国境稜線。無雪期に戸蔦別岳から神威岳への稜線を歩く人はほぼ皆無。JPからナメワッカ岳への稜線も一般登山者には無縁。

 

こうして眺めると、一般登山者が最も簡単に登ることが出来る山が、日本二百名山で最難関と言われるカムイエクウチカウシ山だというのが、面白い。

 

ピパイロ岳からの下山はゆっくり時間をかけて

ピパイロ岳

 

帰路も長丁場になります。まずはピパイロ岳からの下り。登山事故の大半は下山時に起こると言いますので、特に慎重にいきたいところ。残雪の上で滑落すると、緩斜面でもスピードがついてかなり滑り落ちてしまう可能性があります。

 

伏美岳

 

コルまで下りたら、今度は伏美岳への登り返しがツラいところ。ここをクリアすればあとは下るだけなのですが、伏美岳へはなかなか近づけないんですね。

 

伏美岳

 

再び伏美岳に戻ると、正午を過ぎているでしょうから、朝とは違った光の当たり方をした山並みが見られるでしょう。

 

こちらは中日高の山々。一般登山者でも上級者のみにしか達することが出来ない核心部の山々。

 

ナメワッカ岳

 

日高山脈に魅せられた人なら、誰しもが登ってみたいと思うナメワッカ岳。

 

伏美岳

 

札内岳の北東尾根の彼方には、朝は確認できなかったピリカヌプリやソエマツ岳といった国境稜線上のピークらしきものも見えます。それでもやはり判然としません。

 

下山後のお風呂は新嵐山荘で決まり!

新嵐山荘

 

この山域で遊んだら、定番のお風呂「新嵐山荘」。公営の国民宿舎なので宿泊もできます。日帰り入浴は270円(2018年2月現在)で入ることができます。

 

※この記事は2015年6月1日の山行をもとに作成しました。