トムラウシ山|日本百名山を天人峡温泉から日帰りできるか?このコースをおススメする理由とは?

 

日本百名山のトムラウシ山は、北海道内だけではなく全国的にその名が知られているとても有名な山です。

 

地元北海道でも、登山にまったく興味がない人にもその名が知れ渡っており、なぜか「とても難しい山」というようなイメージが浸透しているようです。トムラウシ山に登るというと、まるでエベレストにでも登るかのように、ビックリされることがしばしばあります。

 

その理由として、2009年にツアー参加者の多くが死亡した遭難事故をはじめ、その他にも死者を出す事故が幾度となく発生しているからかもしれません。確かにどのコースから登っても距離や時間がかかることから、悪天候時に容易にエスケープできない特性があります。最寄りの避難小屋もヒサゴ沼まで歩かねばならず、しかも北海道の山小屋は避難小屋の意味合いが強いので、総じて状態が良いとは言えません。山頂付近にいた場合、大岩が散っているロックガーデンを歩行したり、登り返しがあったりと、天候判断を誤ると特に前進時間が多くかかり、危険な状況に陥る可能性も高くなります。森林限界を超えた高原を長時間歩くときは、特に天候には気を配らなければならないのですが、そのようなロングトレイルが北海道には意外と少ないことから、天候による遭難事故が標高の高い大雪山系に集中して起きているのかもしれません。

 

そのトムラウシ山に登るコースとして、多くの人はトムラウシ温泉から登り始め、カムイ天上、前トム平を経てピークに至るトムラウシ温泉コース、もしくはさらに奥にある短縮コースから途中で合流する同じコースを登っていますが、その他にも天人峡温泉から化雲岳を経て縦走路を登るコースがあります。さらにはクチャンベツやヌプントムラウシ、扇沼山から三川台など、林道の通行止めさえ解除されれば日帰りができそうなルートが幾つかあります。

 

この記事では、天人峡温泉からトムラウシ山を日帰りで往復しようと考えている方に向けて、約34㎞の長い行程をご紹介していきます。このコースは、北海道夏山ガイド②表大雪の山々(北海道新聞社)(※注:Amazonにリンクします)でも、日帰りのコースとしては紹介されていませんが、健脚な方であれば日帰りは十分可能です。ただ、このコースの一番の魅力は、ヒサゴ沼や北沼でゆっくりと過ごすことだと思いますので、私も日帰りを推奨しません。自身の体力の確認であったり、連休が取れないといったスケジュールの都合などの理由で、更には確実に天気に恵まれるような場合に限るかもしれませんね。

 

高山植物の開花状況や残雪について参考にしていただければ幸いです。

 

天人峡温泉の出発は日の出とともに

天人峡トムラウシ登山道

 

天人峡コースは多くの登山者から敬遠され、ちょっと乱暴な人からは「下りに使うのはアリだけれど、登りに使うやつはバカだ」などと批判されることすらあります。

 

そこで、私なりのこのコースの良さを挙げるとするならば、

  1. 旭川から小1時間で、林道を走らずに登山口にアクセスできる。
  2. まずは滝見台までのウォーミングアップ、羽衣の滝を俯瞰する。
  3. 起伏の少ない森の中を歩いて第1公園の木道歩きを楽しむ。
  4. 旭岳を見ながらなだらかな第2公園、小化雲岳を目指す。
  5. 森林限界を越えて、お花畑に囲まれながら、大雪山系随一の展望台、化雲岳に登る。表大雪~東大雪の山々の眺望を楽しめる。
  6. ヒサゴ沼と日本庭園、ロックガーデンとトムラウシ山の色々な顔を楽しむ。

といったところが挙げられます。トムラウシ温泉から登るルートとは違った魅力があるのです。一方でデメリットとしては、

  1. なんと言っても距離が長い。
  2. ハイマツ帯に出るまでは蚊などの虫が多く、朝露で身体も濡れやすい。
  3. 登山道が水路にもなっているので、泥だらけになりやすい。

というところでしょうか。ゴアテックスの登山靴やスパッツは、このようなコース向けかもしれませんね。

 

案内看板には軽登山コースと書かれていますが、最初の1.5km区間がこのコース最大の急登ですので、ナメてかかると痛い目をみることに。

 

天人峡登山道

 

まずは「三十三曲り」と呼ばれる急斜面をどんどん登っていきます。出来るだけ早い時間から登りたいので、空が薄っすら明るくなり始めた時間を目がけて、登山開始をしたいところ。

 

滝見台

 

急斜面を登り切って、平坦になったところから500mくらい歩くと滝見台に到着です。有名な羽衣の滝。早ければ30分くらいで登れるでしょうが、普通はここまで1時間くらいかかります。

 

天人峡登山道

 

フラットな森の中をひたすら第1公園を目指して進みます。コースタイムでは、登山口から第1公園の入り口まで約3時間の設定になっていますが、速足で駆け抜けて半分くらいの時間を目指したいところ。

 

第1公園

 

樹林帯に飽き飽きしてきた頃、急な登りとなり、台上に上がるとそこが第1公園です。ここは木道が整備されていて、北海道内の高層湿原のなかでは屈指の景観が待っています。ここだけを目的に訪れる人も多いようで、花も多くて旭岳の眺めも素晴らしいものがあります。

 

木道は一部が残雪で覆われていますが、歩行に支障をきたすほどではありません。

 

姿見駅の標高が約1,600m、第1公園は1,300m台、精神的にツラくなりますが、まだまだ先は長いのです。

 

エゾコザクラ

 

公園というだけあって、お花がたくさん咲いています。こちらはエゾコザクラでしょうか。

 

第1公園は基本的に木道が整備されているので、足元を濡らすことなく歩けます。ただし、滑りやすいので要注意。

 

第2公園

 

第1公園を抜けてやや勾配が急になり、しばらくすると第2公園に差し掛かります。この付近は水はけがよくないので、泥と水溜りで足元を汚すところ。

 

第2公園

 

さらに第2公園を抜け、少しずつ徐々に高度を上げていきます。

 

天人峡登山道

 

途中に古びた案内標識があります。これを見て「まだ半分」と思うか「もう半分」と思うかは人それぞれですが、レジャーですからポジティブな考え方をしたいですね。

 

十勝連峰

 

小化雲岳が近くなってくると、十勝連峰が見えてきます。こちらの旭岳も見えるところが面白いですね。

 

オプタテシケ山から富良野岳まで直線を引いてみると、美瑛富士だけが西側に出ているのがわかりますが、こうして眺めると実感できるでしょう。

 

イワウメ

 

化雲岳は高山植物に恵まれた名山です。こちらはイワウメでしょうか。

 

キバナシャクナゲ

 

キバナシャクナゲと旭岳。

 

トムラウシ山

 

化雲岳が近くなってくると、いよいよトムラウシ山が見えてきます。小化雲岳周辺は雪渓が多く残るので、視界が悪いときは注意が必要。

 

チングルマ

 

チングルマも満開で、トムラウシ山までの間にたくさん咲いています。

 

化雲岳から表大雪を一望した後、憧れのトムラウシ山へ

化雲岳

 

長い高原歩きの末、やっと化雲岳へ。大雪山系随一の展望台。

 

化雲岳

 

こちらは表大雪の眺め。凡忠別岳も魅力的。

 

※音が出ます。ご注意ください。

 

 

化雲岳

 

山と高原地図(昭文社)ではここまでのコースタイムは7時間50分となっていますが、3時間半くらいで登ってしまう健脚な方もいるのだとか。距離が長いので、1歩1歩の時間短縮は大きいですよね。取材時は4時間15分で到着。

 

さて、化雲岳でひと休みしたら、今度は元気にトムラウシ山を目指しましょう。

 

ヒサゴ沼

 

ヒサゴ沼を見下ろし、遠くに東大雪の山々を見渡せる縦走路の一場面。

 

天沼

 

一部に木道が整備された平坦な道を、トムラウシ山へ向かって歩いて行きます。実に気持ちがいい縦走路。いったん、ヒサゴのコルへ標高を下げるのですが、ここが帰り道最大の登り返しとなるところですね。

 

再び登って大きな岩が点在する日本庭園、ゴロンゴロンした岩だらけロックガーデンと道は続いて行きます。チングルマが群生し、お花たちに大変癒される場面ですが、ロックガーデン周辺は一部に雪が残り、進路を見失うかもしれません。実際にコモ子もマーキングを見失い、地形を見ながら適当に歩きましたが、ガスがかかっていたらマズい場面です。

 

振り返ると地形が複雑なのがわかりますね。

 

北沼

 

山頂直下にある北沼。一部がコバルトブルーに輝いています。

 

北沼

 

正体は雪が沈んで光に反射しているのでした。それだけ水が澄んでいるのでしょう。

 

トムラウシ山

 

最後の岩場を登りきるといよいよ山頂です。

 

トムラウシ山

 

全周が見渡せる山頂に到着。化雲岳から2時間ほどかかります。

 

トムラウシ山

 

山頂からトムラウシ温泉コース方向の眺め。

 

十勝連峰

 

白金温泉の奥地の風景。登山者でもほとんど踏み入れない地域を、こうしてトムラウシ山の山頂から臨むことができます。

 

※再生すると音が出ます。ご注意ください。

 

 

トムラウシ山から再び長い道のりを経て、天人峡温泉へ

ロックガーデン

 

帰路も長丁場。まずは難所のロックガーデン。一直線に歩けないので、鞍部に入ると方角を見失いがち。そんなとき、ペンキのマーキングがありがたいですね。

 

東大雪

 

このように真横に東大雪を一望できるのがいいですね。

 

化雲岳

 

化雲岳へ戻り、別れを惜しんで天人峡温泉へ下ります。再び長い長い道のり。

 

第2公園

 

午後になると雪解けが進み、登山道は水浸しに。最後まで濡れないように抵抗するか、諦めるかによって、性格が分かれますよね。

 

第2公園

 

ハイマツや低灌木帯のトンネルを抜けて第2公園、第1公園とグングン高度を下げていきます。

 

天人峡登山口

 

長い樹林帯を抜け、滝見台から三十三曲りを下り終えると、やっと天人峡登山口へ。約34kmの長丁場ですが、明るいうちに日帰りすることができます。

 

この行程を日帰りするポイントは、

  • 天人峡登山口から化雲岳まで5時間以内
  • 6月下旬から7月下旬の日の出前に出発し、日没までに必ず帰る

という点ではないかと思います。でも出来ればヒサゴ沼で1泊したいところ。深く噛みしめながら大雪山系を楽しみたいですね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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