ツアー登山に関して想像する、ガイドさんの気苦労について

旭岳

 

登山口へ向かう車中、ウチのおばあちゃんたちの間では、ガイドさんが引率するツアー登山が話題になることがある。

 

僕の世代ではあまり話題にならないテーマ。

 

利用者が少ないからか?

 

単純に世代の違いが理由なのだろうか?

 

確かに、山で見かけるツアー参加者の方々はどちらかといえば中高年が多いかも。

 

そこで、今日はそんなツアー登山をテーマに考えてみたいと思う。 

 

なぜ、ツアー参加者の年代が高めになるのか?

 

この話題で盛り上がっている僕らの親の世代は、車の免許を持っていない、あるいは免許を持っていても運転したことがない人たちがかなりいる。

 

なぜなら、戦後の高度成長期、自家用車を持っている世帯は少なかったから。

 

僕ら第二次ベビーブーマー世代が子供の頃であっても、近所にはたまにオート三輪を見かけるくらい旧い時代だったのだ。

 

そんな世代の人たちが現役でハンドルを握ることが出来たとしても、やはり夜間や長距離の運転はかなり大変だろう。

 

またこの世代の多くは、スマホやインターネットとは縁が遠いので、交通機関や宿泊の予約も苦労する。

 

年配なので体力的なハンディキャップや、重い荷物を持てない、地図読みを含む技術的な不安なども抱えている。

 

もちろん、全ての高齢者がそうだと言及しているわけではないが、比較的多いという話だ。

 

間接的にそういったことが重なった結果として、山岳ガイドさんが企画するツアーの参加者に中高年の方々が偏ってしまうのだと思う。

 

また、先日の投稿で書いたように、統計を見ても「登山・ハイキングの行動者率は40代以上が多いのも理由だろう。 

 

北海道の山に関する情報は本当に少ないのか?

  

ツアー登山が普通の観光ツアーと決定的に異なる点

 

ツアー登山が、「バスで行く日帰りサクランボ狩り」とか「○○の世界遺産3つを巡る3泊4日」などといった観光ツアーと決定的に異なる点の一つに、目的地(山頂)へ到達できるかどうかがかなりの割合で不確実になるという点だと思う。

 

理由は大きく2つあると思う。

  1. 天候に左右されやすい
  2. 参加者の体力に左右されやすい

登山はプロセスを楽しむものなので、ただ山頂を踏むだけならヘリコプターで行けばいいということになる。

 

でも、山頂へと至るプロセスも楽しみつつ、かつ山頂を踏むというのが登山。

 

だから、自分の足で登るわけだ。

 

で、自分の体力不足で途中棄権するのであれば、諦めがつく。

 

悪天候で登れなかったという理由であっても、自然が相手だから恨みっこなしだ。

 

しかし、同行者の体力レベルに差があって、それが理由で山頂を踏めなかったというのであれば、ちょっと話は変わってくる。

 

気心が知れた仲間とのパーティであれば許せる話だが、初対面の人の体力不足が理由で、時間切れで目的地へたどり着けないとなれば、普通は納得できないだろう。

 

ガイドさんには多額の費用を支払って申し込んでいるわけだし、家族や仕事をしていれば、たくさんの日程調整のやりくりをしただろう。

 

そして何よりも、その山に登りたいという思いが強い。

 

それが、たまたまそこに居合わせた全くの他人の体力不足が原因で、台無しにされてしまったとあれば、納得できないのも理解できる。

 

ここは実に難しいと思う。

 

マラソン大会であれば個人競技なので「はい、ここで時間切れです。ゼッケンを外してバスに乗ってください」と言われても諦めがつく。

 

これが「時間切れの人が出たので、みなさん失格です」となれば「えっ?何で?」となるのが普通だろう。

 

 

ガイドさんの立場になって考えてみる

 

そんな実情もあるからこそ、ガイドさんだって参加者の選りすぐりをしたいだろう。

 

でも、彼らはボランティアではない。

 

ビジネスでガイドをしている以上、悩ましい側面もあるに違いない。

 

どうしても自分のペースで登らせて欲しいのであれば、高い費用を積んでオーダーメイドのツアーをリクエストして欲しい、と思っているかもしれない。

 

塾で大勢で学ぶより、個別指導のほうが相場が高いのに似ている。

 

夜のホストクラブなんかも、そうなんじゃないか?

 

ガイドさんだって、無下に断ればリピーターになってもらえないだろうし、断り方の対応をしくじれば、お客さんが突如アンチに変身することだってあり得る。

 

ガイドさんも名前が売れて人気が出れば、慢性的にキャパオーバーとなって、申し込んでも参加できない人だって増えてくるかもしれない。

 

スポーツクラブで人気のコーチによるレッスンなんかも、同じではないだろうか?

 

人気のツアーに参加できなかった人というのは「商品を買いたかったけれど買えなかったお客」であって、いつも買えるお客といつも買えないお客に二極化してしまえば、いつも買えないお客の態度は火を見るより明らかだろう。

 

とすれば、ガイドさんは「いつも買えないお客」に対して、どうフォローするかがポイントになる。

 

おそらくこの業界の潜在的な顧客数は、かなり限られていると思う。

 

ツアーを通じてお客同士の繋がりができるのが災いして、悪い噂も一気に広まりそうだ。

 

ガイドさんも心労が絶えないと思う。

 

あくまでも僕の想像での話だけど。

 

山岳ガイドさんに求められる資質って、ツアー参加者が下山するまで安全を確保する技術や知識、指導力、自身が山行頻度を維持する体力など、山に関することがメインのようだが、実際はそれだけではなさそうだ。

 

なぜならツアーに参加するのは、感情を持った人間だからだ。

 

引率者としてのサービス精神や顧客に対するケア集客のためのマーケティングや顧客との繋がりを維持していく営業力やフォロー、さらには季節や天候で安定しないであろう売上に対して柔軟に対処していくビジネスセンス

 

想像するだけでもゾッとするし、これをずっと継続していることに関してリスペクトする。

 

僕にはちょっとできない仕事だなぁ。 

 

 

余談になるが、法的に気になっていること

 

僕は大昔に国内旅行業務取扱主任者という資格を取得した経験があるので、ツアー登山の法的な位置付けに関心がある。

 

ここで言うところの法とは、旅行業法についてだ。

 

ネットでちょっと検索してみると、公益社団法人 日本山岳会 常務理事会による「募集型山行計画における会員募集実施の留意点」というPDF文書が最初にヒットした。

 

ここでは内容の詳細には触れないが、行為によっては明らかに白ではなく、黒に近いグレーな部分もありそうな書き方に見える。

 

その他のホームページにも目を通してみたが、過去には立件された事案もあったようだ。

 

それなりに知見がなければ、一般消費者には判別がつきずらいかもしれないが、旅行業としてツアー登山を行っている事業者と、そうではない個人の山岳ガイドさんがいる。

 

かと言って山岳ガイドさんが違法なのかと言えばそうではなく、彼らが受け取る報酬は単に登山口から下山口までのガイドに関する部分であって、運送や宿泊の手配に関するものでなければ問題がないからだ。

 

僕はこのように解釈しているけれど、専門家ではないので、万一誤っていたら指摘していただきたい。

 

とにかく、ガイドさんは、特に中高年登山者や初心者を山岳地帯で安全に導き、登山人口の裾野を広げることに一役を買っている重要な役割。

 

個人的には応援したい。

 

法の解釈を巡ってはややグレーな部分があるかもしれないが、法的に白になるように法改正が行われたり、新しい資格制度が出来たりするのが望ましいと思う。

 

トムラウシ山

過去にはツアー登山で大勢の犠牲を出してしまったトムラウシ山。安全確保はすべてに優先されるが、この日のために本州からはるばるやって来た参加者の熱い思いを汲み取ると、ガイドさんだってきっと葛藤はあるだろう。総合的な状況判断や、時には心を鬼にしてダメなものはダメと言うことも必要になる大変な職業だ。

 

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