【カムイエクウチカウシ山|日本二百名山】を札内川ヒュッテから日帰りする方法|さらに1903峰まで行くには

 

カムイエクウチカウシ山(以下「カムエク」)は日本二百名山の一山で、日高山脈の山々のなかでは、幌尻岳やペテガリ岳に次いで全国的に有名で人気がある山です。日高山脈のなかでは2番目に高い山なので、多くの山々から目立つ存在になっています。

 

北海道の山々は無雪期に限って言及するならば、山頂へ立つことの難しさと標高との関係性はあまりないと言ってもいいと思うのですが、カムエクに関しては標高も高くて、かつ遠い山であることに間違いありません。

 

さて、カムエクに限らず、日高山脈の山々にほぼ共通して言えることとして、林道の終点から沢に入渓し、沢の中を歩かなければならないということが挙げられます。おそらく、ここが一般登山者にとって日高の山々を遠ざける≒難易度が高いと言われるゆえんではないかと思われます。

 

日高山脈の無雪期登山では、尾根の取り付き地点まで沢を歩き、そこからいきなり急登が始まることがほとんどです。しかし、カムエクに関して言えば、尾根には取り付かず、カールに至るまで沢を歩くという点が少々異なり、沢登りに分類されています。

 

では、なぜ多くの人たちがこの八の沢ルートを登って山頂に立てるのかと言うと、登攀用具や技術がなくても登ることが出来る易しいグレードの沢登りだからと言えます。

 

実際、無雪期登山を扱うガイド本においても、「北海道夏山ガイド」(シリーズ第4巻「日高山脈の山々」)ではこの八の沢ルートは紹介されておらず、「新版日本三百名山登山ガイド(上)」にはガイドページがあります。また「北海道沢登りガイド」では最もグレードが低い☆1つとして詳細が記されています。つまり、一般登山者向けではないけれど、沢登りとしては易しいレベルという曖昧な領域にカテゴライズされているわけで、情報を発信する側が客観的な立場で考えたとしても、分類の判断が分かれる微妙な山なのだと言えます。

 

ですから、これからカムエクへの山行を計画される方は、これらのことを念頭において考えていただきたいと思います。なお、私自身はこの記事の中でスピードハイクでカムエクを日帰りした内容を紹介しましたが、すべての方に日帰りでの山行を推奨しているわけではなく、むしろ十分な計画をして実行に移していただきたいと思うのです。もし今シーズンに登る予定であれば、夏までに多くの情報を集め、当日の天候と数日前からの累積雨量を見極め、十分なトレーニングと準備をして楽しんでいただければ幸いです。

 

日帰りをするには、夜明け前に札内川ヒュッテをスタートしよう!

 

カムエクは1泊から2泊での山行が推奨されていますが、最近は日帰りについての記録も多く見られるようになりました。さらに、隣のピラミッド峰とセットで登る人も増えているようですね。沢歩きの経験があり、健脚だと自己評価できる人ならば、それほど困難な山ではないというのが私の主観的な意見です。

 

 

さて、ここから本題に入ります。この記事をご覧になっている方は、一部の愛好家の間で「カムエク三山」と言われる、カムエク本峰、北北西に位置する縦走路上の1917峰、ほぼ真北に位置し、縦走路からちょっと外れた1903峰があるのをご存知でしょうか。今まで、この3つの頂を日帰りしたという記録を見たり聞いたりしたことがなく、以前からちょっとだけ興味がありました。

 

カムエクにすら登ったことがないのに、無謀なチャレンジではないだろうか、と不安になりますが、なぜか湧き上がる情熱を止めることができず、実行に移すことにしました。

 

前日から出発までの行動は次の通りです。

  1. 山の道具をすべて車に積んでから出社。
  2. 18時に退勤後、帰宅せずにそのまま日勝峠を越え、札内川ヒュッテへ直行。
  3. 23時頃から2時間半の車中泊で仮眠を取る。
  4. 朝2時50分に出発し、札内川ヒュッテから道道(北海道は県ではなく道なので、県道ではなく道道と言います)を歩き始める。 

ややタイトなスケジュールです。

 

札内川ヒュッテ

 

舗装された道道は、車両通行止になっているトンネルからスタートします。トンネルを抜けると、コイカクシュサツナイ岳~1839峰の登山口となるコイカクシュサツナイ沢の入渓地点が左手に見えます。1年に数百人も登っていないであろう中日高の核心部「コイカクシュサツナイ岳登山口」と書かれた案内標識もあります。

 

 

ここからさらに数kmを歩き続け、道を離れて七の沢出合へ到着です。自転車がたくさん置いてあり、前日の入山者が多いことが伺えます。この区間を、自転車で素早く移動して、時間短縮・体力温存を図る人が多いということですね。

 

七ノ沢出合

 

河原に出ると、ご丁寧に流木に矢印がペイントされています。

 

いよいよここからスタートです。

 

カムイエクウチカウシ山七ノ沢出合

 

こんな広い河原ですが、みんな整然と自転車を並べているところが、いかにも日本人らしい秩序ある行動ですね。

 

当初の計画では、トワイライトな時間にここまで到達する予定でしたが、すでに日の出を迎えており、計画が危ぶまれます。

 

 

今回の装備はこんな感じ。

 

背中に衣類(レインウェア、ダウンウェア、長袖シャツ、靴下、手袋など)を入れるため、ノースフェイスのマーティンウイング10リットルをチョイス。

 

八の沢カールで沢靴をデポした後に履く、ローカットシューズ(サロモンのXAプロ3D)を入れるためのヒップバック。

 

お腹に食料を入れるため、モンベルのカメラバックというスタイルです。

 

手はホームセンターで購入した、ゴム手袋(蒸れて最悪)、足は釣り用のフェルト靴で八ノ沢に向けてバシャバシャ歩き始めます。水が適度に冷たくて気持ちが良いですね。

 

念のため、八ノ沢カールまでヘルメットを被り、999三股までストックも持ちます。川歩きではバランスを取るためにストックがあると便利ですね。

 

カムイエクウチカウシ山八ノ沢出合テン場

 

上手く捲き道を見つければ、ほとんど渡渉せずに八の沢出合まで到達できますが、そこは経験から得られる沢感(勘)、先々を見る観察力、それと川の水量によるところが大きいと思います。いっぽう、スピードを重視するのであれば、濡れることを気にせず、とにかく歩きやすいところを、サクサク歩いて行くのが早道だと思います。

 

 

八の沢出合にはキャンプ適地があり、多くの人がここでテン泊をして拠点にしています。

 

でも、夏は蚊が多そうですよね(汗)

 

ここから、朝食中の方々を横目に、倒木で荒れた八の沢を遡りますが、倒木が邪魔をして意外と時間がかかります。

 

八の沢出合のスペースの都合上、テントを張れなかった人が、もう少し上流の中州でテントを張っていたのには、ちょっとビックリ。

 

※この後2016年には、日高山脈全般に台風の被害がありましたので、渓相が大きく変わっていることも考えられます。

 

 

八の沢出合から八の沢カールまで遡行する

八の沢

 

沢は、八の沢カールまでほぼ一直線に突き上げていて、カールを正面に見上げるため、テンションが上がること間違いなし。

 

それにしても大きな岩がゴロンゴロン、流木がグワシャグワシャ、という感じでとっても歩きずらいです。

 

カムイエクウチカウシ山八ノ沢999三股2014

 

標高点999付近には、前日に崩壊したと思われるスノーブリッジがありました。ちょっと危険なので、右岸の雪の上に登り、急いで通過します。

 

ここから高度をグングン上げていきますので、ストックをデポしておくといいでしょう。帰りに忘れないように、ピンクテープを付けておくといいかも。

 

999三股

出典「地理院地図」地理院タイルを一部加工して使用 

 

ちなみに標高点999は、2万5千図で八ノ沢の水線が切れたところから、南西に100m標高を上げた付近です。

 

カムイエクウチカウシ山八ノ沢2014

 

さて、ここからが八の沢の核心部。すべて捲き道がありますが、油断できないところです。

 

私が登ったときは、多くの方が入山しており、やや渋滞気味。焦らず安全に譲り合いたいところ。

 

八ノ沢カール

 

水の流れが少なくなってくると、まもなく八の沢カールに到着です。すでに札内川ヒュッテから6時間以上経過しており、計画の修正を考えながら歩きます。

 

八の沢カールは楽園と呼ぶにふさわしい!

八ノ沢カール

 

そして、いよいよ八の沢カールに到着です。「楽園」とはまさにこういう場所のこと。傾斜が緩やかになる登り口から見渡す、平らで広い地形。雨竜沼湿原の入り口や、羅臼平への入り口を思い出しますよね。

 

右側にはカムエクの急峻なカールバンド、左側にはピラミッド峰。「カムエクの美味しい水」は飲み放題。最高です。

 

いっぽうで、ここに慰霊碑があるように、過去に福岡大学ワンダーフォーゲル部の獣害による悲劇が起きています。その詳細については他サイトに譲りますが、ヒグマに関して日頃から見識を深め、遭遇しないように心がけるべきこと、万一遭遇してしまったときにはどうすべきかについては、十分なシミュレーションをしておく必要がありそうです。

 

八ノ沢カール

 

荷物をすべて下してしばらく休憩。

 

ここまで水を担がなくてもいいのが、このルートのメリットですね。

 

国境稜線に上がり、憧れのカムエク山頂へ

カムイエクウチカウシ山

 

カールバンドの傾斜が緩やかで、国境稜線上のコルになっている付近に上がり、目指すカムエクの姿を近くに捉えます。

 

このルートを訪れる人が多いのでしょうか、日高の稜線にしては珍しく、踏み跡というよりも、登山道のように歩きやすい道が出来上がっています。

 

それでもカムエクまで、標高差が250mはあるので、楽はさせてくれません。

 

ピラミッド峰

 

こちらはピラミッド峰。標高差は地味に150m近くあります。

 

 

ピークのちょっと手前のお花畑。本当にすべてにおいて、楽しませてくれる山です。

 

先行者の方も、お花畑で佇んでいます。気持ちに余裕がある証拠ですよね。

 

 

そして、やっとカムエクの山頂に到着。予定より1時間以上遅くなって、すでに11時になっています。「この先はやめよっかな~」とちょっと弱気になってたりして。

 

まあ、あれこれ悩んでも仕方がないので、目指す1917峰へ向けて、国境稜線を北側に下りていきます。

 

カムエクを北側から眺めるため、ピークを越えて1903峰へ行こう!

カムイエクウチカウシ山北側

 

カムエクを越えると、ここからの国境稜線は、日高らしいハイマツと灌木の踏み跡になります。

 

今までと同じ感覚では歩けないので、かなり時間がかかるんですよね。

 

再び標高差にして約250mを下るわけですが、振り返ると気力を損ないかねませんので、前へ進むことにしましょう。

 

地図上の1730コルから登り返して後方を振り返ると、憧れだったカムエクの北斜面がバッチリ!

 

実はカムエクが美しく見えるのは、北側から見るこの姿なんですよね。本当に来た甲斐がありました。

 

1917峰

 

こちらは、今日の目的地として計画していた国境稜線上の1917峰。再び100m以上標高を落としてから登り返すとなると、ちょっと時間的に無理そうですね。ここは素直にあきらめましょう。無理は禁物です。

  

1903峰

 

こちらは1903峰。登り返しがあまりない1903峰を折り返し地点として、山頂からカムエクを眺めて引き返すことに決めます。

 

九ノ沢カール

 

1917峰と九の沢カール。前出のヒグマによる悲劇は、この付近ですでに始まっていたのだそう。

 

カムイエクウチカウシ山

 

実際、この日も主稜線上の・1730から北北東、僅か200mの雪渓付近にヒグマの個体が1頭いました。

 

1903峰

 

今日の終着点となった1903峰でのセルフィ―。この時点ではすでに1917峰は諦めていましたが、ピラミッド峰には登ろうと企んでいる顔をしています。

 

ちなみに、1903峰へはハイマツのブッシュの中を歩いていきますが、落ちたらケガするような岩場もあるので慎重に通過します。

 

国境稜線上ならまだしも、こんなところでケガをしたら、誰にも発見されることはないでしょう。ちなみにヒグマは死肉でも食べるのだとか。

 

帰りは慎重かつスピーディに

 

黙々と歩き続けて、再びカムエクに登って今日2回目のピークを越え、八の沢カールの上部にある稜線上のコルまで戻ってきました。

 

北から縦走する場合「カムエクをアタックする」という表現がしばしば使われますが、そのくらいこの登り返しは精神的にも肉体的にも負担がかかります。

 

私もかなり消耗し、すでに14時を過ぎているので、さすがにピラミッド峰登頂を諦めて、スピード下山をすることに。目標は暗くなる前に七の沢出合まで帰ること。すでに八の沢カールには、先ほどまではなかった、新しいテントが張られています。

 

次回はテントを担いで山旅を楽しみたいところ。

 

日高山脈全山縦走という、偉業を成し遂げられる方がいますが、日高山脈全カールでのテン泊制覇みたいな、異業にチャレンジしてみたいです(^^♪

 

1629峰

 

八の沢は東斜面になるので、夕方になると暗くなります。

 

正面に見えるのは1629峰、左は十勝幌尻岳、右は岩内岳でしょうか。

 

日高山脈にはこうした一般登山者には無縁の名峰が多数あります。

 

七の沢出合

 

八の沢カールから一気に下り、札内川をバッチャバチャ歩いて急ぎます。

 

19時になってやっと七の沢出合まで下山完了。

 

シャッタースピードを遅くしてのセルフィ―ですが、実際はかなり薄暗くなっています。

 

あとは林道歩きなので、ヘッドライトを点灯してトボトボ歩くだけ。七の沢出合にあった自転車は、ほとんど無くなっていました。

 

今日は多くの人たちが、入山していたんですね。

 

札内川ヒュッテ

 

21時に札内川ヒュッテ到着。今朝は3時出発ですから、合計18時間行程…

 

さすが日高山脈ですね。大雪山を18時間歩くのとは、比較できないくらいの疲労感(汗)

 

この夜は車で移動せずに、車中で泥のように眠るのでした。

 

翌日は朝6時にヒュッテ前を出発し、お昼には札幌到着。2日間の休日でも、頑張ればカムエクだけではなく、1903峰まで日帰りできるのでした。

 

ただし、積乱雲が発達して雷が発生したり、ヒグマ出没によって進路妨害されたりした場合などを考えると、もう少し充実した装備と、予備の計画を持つべきだと思います。

 

 

最後までお付き合い下さいましてありがとうございました。

  

※この記事は2014年8月3日の山行をもとに作成しました。

 

関連記事

ピパイロ岳伏美岳

伏美岳からピパイロ岳へ。遠景では台形の山ですが、稜線上から見上げると、ピラミダルでカッコイイ!

幌尻岳北戸蔦別岳1967峰チロロ林道

チロロ林道から幌尻岳と1967峰を日帰りしてみました。日高山脈にどっぷり浸かってみませんか。