· 

2022 第19回 富士山頂往復マラニック参加を振り返って

富士山登山ルート3776

 

先週、2022 第19回 富士山頂往復マラニック(通称:ゼロ富士)に参加させていただきました。

 

マラニックはマラソンとピクニックを掛け合わせた造語。とは言っても往復の距離は100kmを超えますし、獲得標高は4000m近く、制限時間24時間というタイムも設けられていることから、なかなかハードな企画。

 

一般的なマラソン大会には主催者がいて、その管理下のもとで運営されますが、このイベントはちょっと性格が異なります。参加者ひとりひとりが主催者となって、すべて自己責任のもとで行動します。呼びかけ人さんとボランティアさん、コース途中の協力店舗様などのご厚意で走らせていただくのです。

 

今回は、大会の様子を主観的な目線でブログに残してみたいと思います。

 

➡ダイジェスト版のヤマレコはこちら

 

➡終了後48時間までの回復に至る過程はこちら

 

ふじのくに田子の浦みなと公園からスタート

ふじのくに田子の浦みなと公園

スタートとゴールはふじのくに田子の浦みなと公園。東海道新幹線の新富士駅にせよ、東海道本線の吉原駅からにせよ、数キロ単位で歩かないとならないくらい不便な場所です。私は新千歳空港を9時に出発し、アクセス特急、東海道本線を乗り継いで吉原駅へ。駅からテクテク歩いていたら、千葉県からの参加者さんと一緒になり、お話しながら会場へ。そうそう、駅から公園まではコンビニすらないので食料は事前に購入しておくか、スタート後に走りながら調達します。

 

ゼロ富士マラニック受付

受付が済んだら15時から18時の間に勝手にスタートすれば良いルール。富士登山に義務付けられている健康チェックがあるので、こちらで体温を測定して「検温・体調確認済み」のバンドを受け取ります。参加費用に入山料(協力金)も含まれているので、缶バッヂも受け取ります。ゼッケンはすでにメール便で受領済み。口頭で装備のチェックを受けて受付は終了。不要な荷物はトラックで預かってもらえますが、制限時間まで戻ってこないと迷惑をかけてしまうので、少々プレッシャーも。

 

富士山登山ルート3776

富士市では、ふじのくに田子の浦みなと公園起点で富士山登山ルート3776のチェレンジを後押ししています。今回参加したマラニックとはコースが異なり、距離は少し短めみたい。行程は3泊4日を推奨されているようです。逆に言うと、私たちのような参加者はすぐに帰ってしまうため、地元にあまりお金が落ちないんですよね。せめて宿泊は市内にしておけば良かったかな。

 

富士山往復マラニック

受付が済んだら、公園の隅っこにスタート兼ゴールのゲートが設置されているのでそちらへ移動。途中、海抜ゼロメートルの砂を拾って山頂へ運びます。私は山頂へ置いてくるのを忘れましたが。

 

富士山頂往復マラニック

深呼吸をしてスタート。これからおよそ110km、24時間の長い道のりが始まります。気温が高いので、17時を過ぎてからスタートした方が賢明かもしれませんね。でも私みたいに丸1日かかる場合、帰り道で暑さの洗礼を受けるわけですが。

 

マラニック

コースの大半は一本道で分かりやすいものの、最初の3キロくらいは地図を見ながらでないと迷うかもしれません。私はヤマレコアプリにコース登録をして、GPSを見ながら進みました。他の参加者さんもいて安心。

 

マラニック

一般的なマラソン大会とは異なり、交通規制はありません。歩道があれば歩道を走る、信号機にはもちろん従う、横断歩道を渡るといった基本的なルールを守ります。信号が赤になりそうだなと思ったら数十メートル前から歩きへ変更、他の参加者さんとはソーシャルディスタンスを確保。 

 

富士宮駅

13km先の富士宮駅に到着。ここまでおよそ2時間。日が暮れ始め、かなり涼しくなってきました。高低差があまりないので、タイムを縮めるならばここまでが勝負とのこと。コンビニや自販機も多いので、水を持たずに軽装で駆け抜けたほうが良かったかもしれません。富士登山があるのでシューズの選択には最後まで迷いました。結局、履きなれたスピードクロス4にて。多くの参加者さんはロード寄りのトレランシューズだったみたい。ゼロ富士プラス(下山後に富士山を一周する48時間コース)に参加されていたある方は、ロードのシューズを着用していました。中には2足を使い分けていた方もいるみたい。

 

行動食

富士宮駅から富士山頂まではずっと登り。途中には店舗総出でサポートしてくれるセブンイレブンもあり、みなさんそちらで一休み。私はアミノバイタルを追加で購入したくてドラッグストアでお買い物。スタートからおよそ20km地点のコンビニを過ぎると、水以外の補給がほぼ困難となるので、適正な食料の量が悩ましいところです。今回は天候が良かったものの、悪天候の富士山は厳しいですからね。装備と食料は余裕を持ちたいものです。

 

富士宮口30km

日が暮れた坂道をひたすら登っていきます。傾斜が緩めば走り、急になったら歩くの繰り返し。そもそも暗い夜道だから傾斜がよくわからないんですよ。力のある方は歩きでもとっても速いし、急傾斜でもコンスタントに走っていきます。それと深夜に車道を走るので、前後に点滅式LEDライト、反射タスキ、ヘッドライトが最低限の装備。このあとは雲の中に入り、一部では小雨模様に。

 

西臼塚

雲の上に出て星空が見えてきた頃、33km地点の西臼塚パーキングエリアに到着。ここで通過チェックを受けます。水や麦茶の補充ができ、厚意でエイドも開設されていました。16時20分出発で現在時22時20分。ここまでの所要時間は6時間です。ゴミの回収もしてくれたようですが、ペットボトルは不可。すべて自己完結の気持ちで。

 

旧料金所

さらに数キロ歩いて富士山スカイラインへ。この辺りの標高が1460m。ここからおよそ13kmで標高を1000m上げます。気温も20℃くらいまで下がって心地よいですね。

 

富士山4合目

旧料金所ゲートで「行ってらっしゃい」と送り出され、その後約13kmにわたるキツい登りが延々と続きます。200m間隔で設置された距離表示が0.2kmずつ減っていくことだけが気休め。5合目到着を深夜1時30分に設定し、じゃがりこをポリポリと食べて塩分補給しながらやっと4合目へ。ここまで来ると夜景がきれいなんですよ。

 

富士宮5合目

予想通り1時31分に富士宮5合目に到着。呼びかけ人さんの配慮で、こちらにも臨時の給水ポイントが設置されていました。2リットルを満水にして出発。深夜早朝の山頂往復に2リットルは不要ですが、下山後は炎天下が予想され、西臼塚まで無補給なことを考えると心配です。そうそう、ここに装備の一部をデポするという選択肢もあったかもね。

 

富士山表口8合目

不眠で10時間以上行動し続けているため、6合目付近から急に睡魔が襲ってきて2回くらい座りこみました。子連れの一般ハイカーさんにも抜かれるくらいスローに。寒冷地仕様の私ですが、さすがに標高3000mで半袖短パンでの停滞は寒いので、上衣だけモンベルのウインドブラストクリマプラスワッチキャップを着用。昨年8月の富士登山はとても寒かったので、防寒テムレスノマドジャケットフルネイパーカーも持っていきましたが結局使わず。でも、富士山は荒れると本当に厳しから装備は慎重に。

 

富士山

夜が明けて眠気は失せたものの、いつものように登れない自分。5合目から山頂まで3時間、下り2時間の計画でしたが、それぞれプラス1時間の下方修正へ。8時半下山に改めます。高山病にならないのが救い。

 

富士登山

うーん、今やっていることは何なんだろう?って自問自答しながらの登山。海岸から標高2500mの登山口まで深夜に寝ないでアプローチして、日本一高い場所に登り、下山後も海まで50km走。軍事作戦でもなければ訓練でもないただのレジャーなんだよね。人間とはなんて不可解な行動をする生き物なのだろうって。

 

影富士

朝5時を過ぎた頃、突如影富士が姿を現しました。貴重な体験にかなり満足。一般ハイカーさんと喜びを分かち合います。

 

剣ヶ峰

ほぼ下方修正した通りのタイムで登頂。剣ヶ峰は写真撮影のために大渋滞。写真は下の広場で撮ることにしてサクッと山頂タッチして下山。こんなに天候に恵まれたのに御鉢回りをしないのはもったいないけれど、タイムリミットがあるので後ろ髪(なんてないけれど)を引かれる思いで下山。奥宮で安全祈願のお参りとトイレも済ませておきます。

 

富士山剣ヶ峰

剣ヶ峰をバックに撮ってもらいました。お願いした方に私の思いが通じたのか、構図や距離感がバッチリ。ありがとうございます。

 

富士山剣ヶ峰

ちなみに昨年の富士登山の時と服装が一緒でしたね(汗)

 

御殿場ルートから宝永火口縁を経由して下山

富士山御殿場ルート

下山ルートは御殿場ルートを選択。富士宮ルートは混雑するので、宝永火口縁経由のルート選択も可能。トレランで慣らした方々は走って下山していきますが、私の技量では大砂走より上部では走れないなぁ。安全確実に。

 

宝永山

宝永山まで僅か数分の距離ですが、右折して富士宮登山口方面へ。残り50kmもあると思うと、僅か100mでもショートカットしたいって思うのが私の弱さ。

 

宝永山第一火口

宝永第一火口の脇を下っていきます。スケールが大き過ぎて思わず足を止めてしまうほど。ここ、標高2,400mを超えた世界なんですよ。

 

富士宮登山口への歩道

実はこのブログを書いている段階で気付いたんですけどね、第二火口壁まで下りずに新六合へ出るのが正解だったみたい。だって、登り返すなんて思わなかったんだもの。私っておバカさん。林内で転んで右膝から流血するし、、、

 

ゼロ富士

富士山スカイラインに出てからはひたすら下り。ヒルクライムの方々に励まされるものの、下りの筋肉群が悲鳴を上げておりまして、後続の方々にことごとく追い抜かれてしまいます。でも一念発起して西臼塚のチェックポイントの手前8kmくらいから痛みをこらえてキロ5分ペースくらいで飛ばしてみたら、意外と走れました。しかし、その後は完全に走れなくなっちゃいました。西臼塚通過は10時40分頃。残り33kmを6時間弱。キロ8分のスロージョグでもせいぜい4時間半の距離。歩くことすらままならない状態でなんとか富士宮市街地へ。

 

セブンイレブン

前述の店舗総出で応援してくれるセブンイレブンさんで一休み。10代と思われる女性店員さんに笑顔で「最後まで頑張ってくださいね(キラキラ)」と言われて一気に元気になった私。こんなジジィ、万券を積まなければ誰も相手にしてもらえないだけに、涙が溢れてきました。思わず「お嬢ちゃん、お小遣いあげようね」って言いかけたくらい。でも、このあと他のランナーさんと「もはや時間外完走確定ですよね」って傷の舐め合いモードになる意志薄弱な私。

 

ゼロ富士

その後も歩き続け、富士宮駅からの平地では少し走ってみたものの、やはり足が痛すぎて24時間以内の完走はまさに無理ゲーに。しかし最後の10kmくらいの信号待ちで、後方から追いついてこられた方に励まされ、一緒におしゃべりをしながらゴールすることができました。タイムは24時間41分。疲労と暑さでこの方にはろくにご挨拶もできずに座り込んだまま別れてしまったけれど、完走させていただいたことに感謝しております。ゼロ富士にはまた機会があれば参加してみたいものですが、抽選になるくらい人気の企画ですのでここはみなさんに譲って、次回は一人でも多く初参加の感動を味わってもらいたいと願います。呼びかけ人さん、ボランティアの方々、応援してくださった方々、本当にありがとうございました。そして参加者のみなさん、お疲れさまでした。一期一会に感謝です。