11年ぶり。2度目のカムエクに登ってみた話

8月3日、11年ぶりにカムエクに登ってきた。

 

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同行のmさんとは、昨年から日高山脈をご一緒させていただいている。お互いソロ登山が多いが、彼女は北海道百名山の完全登頂を目指していて、私は「10年の壁」によるマンネリ打破に繋げたいという思惑がある。お互いにとってメリットがあり、こういうコラボができるのも、テクノロジーの進化によるマッチングの結果みたいなものだと思う。

 

昨年は北戸蔦別岳~1967峰、伏美岳~ピパイロを、今年は芦別新道のウォーミングアップを経てイドンナップ岳、コイカク~1839峰に続いてのカムエクだ。僅か1年の間でこれだけのメニューを一緒に消化できたのは、確かな成果だと思う。

 

天候に恵まれたことだけでなく、今年は6月頃から気温が高いこともあって、予定より前倒しで計画が進んだ。3つの山行が8月上旬までにコンプリートしてしまい、ややあっけない気もする。

 

とりあえず、今回の山行を振り返ってみたい。

  

札幌から4時間で中札内へ

ナビ

20時。札幌市内でレンタカーを借りる。この日は休みだったので、日中のうちに仮眠を取ってからの行動。

 

mさんとは深夜1時30分に、道の駅なかさつないで待ち合わせ。いつもこの時間帯に合流するので、もはや違和感を感じなくなった。

 

自転車を積みこんで20時30分に出発すれば、一般道経由でも4時間後の24時30分には到着できる見込み。

 

ソリオに自転車を積む

いつものニコレンで借りた車はソリオ。後部座席を倒し、MTBの前輪だけ外すだけで乗せることができた。

 

道の駅なかさつない

道の駅なかさつないには、予定通り24時30分頃着いた。

 

一般道を走ってみた結果、

  • 札幌ー夕張
  • 夕張ー日高
  • 日高ー十勝清水
  • 十勝清水ー中札内

この4区間が各50km強でそれぞれ約1時間、合計4時間ということが分かった。往路復路ともに同じある。

 

以前は難所だった日勝峠は、両方向の登りが全線2車線と言っていいくらいになり、今や黒煙を吐きながら登る大型トラックのノロノロ運転に悩まされることは無い。日高側の覆道部分もいつの間にかトンネル経由の新しい道が完成して快適になった。

 

あとは国道から登山口までの移動時間をプラスすればよい。

 

北蔦別岳やチロロ岳なら札幌から3時間~3時間半、芽室岳や伏美岳なら札幌から3時間30分~4時間、十勝幌尻岳なら4時間~4時間30分、カムエクや1839峰なら4時間30分~5時間といったところになると思う。

 

幌尻ゲートから自転車で入渓地点、札内川本流から八ノ沢へ

幌尻ゲート

予定通り1時30分に合流し、2台が連なって登山口へ向かう。2025年は札内川ヒュッテより先にある幌尻ゲートまで車で行ける。

 

舗装が途切れるあたりに数台分の駐車スペースがあり、そこから自転車で出発。この時期の夜間行動は、ヘッドライトに集まる虫が酷い。

 

札内川ヒュッテ

ちなみに、前回2014年に来た時は札内川ヒュッテのゲートは閉まっていた(上の画像)。

 

とは言え、幌尻ゲートまでそれほど距離は無いので、自転車ならそれほど問題ない。

 

七ノ沢出合

45分程度で七ノ沢出合の入渓地点に到着。起伏×不整地なのでMTBだととっても楽。ここで自転車をデポし、札内川本流を行く。

 

札内川本流

河原歩きと林内の捲き道を使えば、無理に渡渉しなくてもなんとかなりそうだ。

 

ただ、空が暗い時間帯での行動になるから、どうしても林内を避けて河原歩きと渡渉を繰り返してしまう。同行のmさんには不快な思いをさせてしまった。

 

地形図の水線と並行してもう1本の流れがある箇所もあって、自分が中洲部分を歩いていることに気付けないこともあった。

 

八ノ沢

入渓地点から八ノ沢出合までおよそ100分かかった。

 

ここの林内でテント泊しているパーティが数組いた。

 

八ノ沢カールでのテント泊は快適な反面、防寒対策とヒグマ遭遇リスクがあるし、環境への配慮も必要になる。何よりテント泊装備で登るのは大変だ。

 

では途中の・999の三股はどうかと言えば、地積が小さいので先行者がいる場合はテントを張れない可能性もある。

 

八ノ沢

八ノ沢に入ってからしばらくは易しい河原歩き。私のような沢歩き1年生レベルでも問題なく歩ける。

 

やがて正面に八ノ沢カールと山頂が見えてくる。ここで山頂が見えないとゲンナリするだろう。

 

八ノ沢には随所に捲き道もある。それでも捲き道部分にこそ濡れた岩が多いので、カールまで沢靴で通した方がいいと私は思う。

 

三股

地形図の水線が途切れるあたりが三股と呼ばれていて・999と記載されている。ここから八ノ沢カールまでがこのルートの核心部。

 

今回もここにストックをデポしていったのだけど、そもそも最初から不要だったように思う。

 

八ノ沢三股

2014年に来た時は、このくらい雪が残っていた(上の画像)。同じ8月3日なので純粋に11年前にあたる。単なる年度によるバラつきレベルなのか、それとも地球温暖化の影響か。

 

調べてみると、春から夏にかけての平均気温が2014年と比べて2.5℃くらい高いそうだ。

 

八ノ沢

三股からカールまでは、向かって右側の捲き道を使って登っていく。固定ロープが設置されている箇所もある。三点支持の基本で岩をしっかり捉えながら、一歩一歩確実に進んでいく。

 

八ノ沢カール

沢が伏流して水の音が聞こえなくなると、そこは八ノ沢カールの入口だ。立ち止まってヒグマがいないか何度も確認する。静寂に包まれていると言っていい。

 

八ノ沢カールからカムエクの山頂へ

八ノ沢カール

三股から110分で八ノ沢カールに着いた。

 

時刻は午前9時を回ったところ。入渓地点からおよそ6時間、まさに教科書通りである。ここで沢靴からトレランシューズに履き替える。

 

沢靴をデポしていったのだけど、ヒグマの活動圏内では食料だけでなく、すべての装備品を放置しないことが推奨されているようだ。

 

ピラミッド峰

ピラミッド峰側の踏み跡を登って主稜線に出る。

 

T字路を右へ進めば山頂、左に進めばピラミッド峰だ。

 

札内川本流からずっと一緒だった2人組パーティさんは、先にピラミッド峰へ寄ってから山頂を目指すようだ。賢い選択だと思う。

 

きっと北海道在住の日高好きさんだろう。二百名山目的であれば、わざわざピラミッド峰には寄らないと思う。

 

カムイエクウチカウシ山

最初の岩稜帯まで登ると、いよいよ山頂が見えてくる。道もハッキリしていて、ハイマツに難儀することはない。(日高にしては)スッキリした稜線歩きだ。

 

カムイエクウチカウシ山

直下にはお花畑があって、さながらビクトリーロードのようだった。

 

ただし、ところどころにヒグマの掘り返しもあるので、油断しないようにしたい。

 

カムイエクウチカウシ山

11時、山頂に着いた。2014年に来た時は三角点以外に何も無かった。どなたかが山頂標識を付けてくれたらしい。

 

でもなぜ、「カウイエクウチ」が1行目で、「カウシ」が2行目なのかが気になったので、AIに尋ねてみた。すると以下のような返答があった。

 

「kamuy(神、熊(アイヌ文化では熊は神聖な存在))-e(そこで、そこにおいて)-kut(岩段、崖)-ika(またぐ、踏み外す)-us(よくする、いつもする)-i(~する場所、ところ)」と分解されるらしい。

 

この山名はアイヌが命名したのではなく、後世になって付けられたという話も聞く。

 

今度は新しい山頂標識を持参したいとも思う。裏面をまな板代わりにし、真空包装した鮭と包丁を持ってきて鮭のチタタプでもできたら楽しそうだ。もちろんアシㇼパさんのコスプレで。

  

ピラミッド峰

帰り道の主脈歩き。

 

僅かな時間ながら、日高山脈の景観を楽しめる。

 

そしてピラミッド峰と1823峰に魅了される私。今回も登らずに帰ることになるのだが、最近は憧れのまま手に届かないのも悪くないな、と思えるようになった。人間として成熟期に達したということか。

 

カムイエクウチカウシ山

正面にカールバンドを見上げながら八ノ沢カールへ下っていく。

 

ドライゼロ

水場で冷やしておいたノンアルコールでひと休み。カムエクは水を担がなくてよいから体への負担が少なくて済む。

 

と油断していたら、下山後に激しい筋肉痛が2日間続くことに。

 

それを乗り越えてパワーアップしたら、また翌週末も山へ出かけるパターン。

 

八ノ沢

私のような一般登山者にとって、このルート最大の難所は三股までの下降だと思う。

 

急な斜面は両手を地面につき、かつ屈伸をしながら確実に降りていく。登山事故の7割は下山時に起こると聞くから、ついつい慎重になってしまう。

 

それでもこのルートは日高山脈で最も簡単な沢だと言うから、沢登りは別世界の遊びだと考えたほうがよさそうだ。

 

七ノ沢出合

19時に七ノ沢出合に着く。空はまだ明るい。

 

私にはまだ宿題があって、次は10.5の沢からシュンベツ岳へ登ってみたい。

 

加えて札内川本流を詰めて札内岳にも登りたい。

 

実現するかどうかは分からないが、まずそれを思わなければゼッタイに実現はない。

 

幌尻ゲート

暗くなりつつある林道を自転車で幌尻ゲートへ。帰りも40分ちょっとだった。

 

3週前の1839峰の山行に比べれば、屁みたいなものだと思えてしまうが、カムエク日帰りは一般的ではない。既に感覚がおかしくなっているかもしれない。

 

MTB

帰りは前輪も後輪も外して車に積んだ。

 

車中泊をするにはもう一度下ろす必要がある。

 

面倒なので積んだまま助手席で寝た。mさんはそのまま札幌へ帰ったようだ。なんてパワフルなんだろう。

 

道の駅なかさつない

中札内へ着いたのが21時頃。

 

コンビニでビールとサンドイッチを買い、道の駅なかさつないで6時間30分仮眠をした。

 

雨のなか朝5時に出発し、9時に札幌に到着。母をピックアップして11時に小金湯温泉へ。帰りにびっくりドンキーで栄養補給して今週末の休日は終了となった。

 

おわりに

今回mさんとご一緒したのを機に、私自身ももう一度北海道百名山を見直してみた。 

 

今まで登っていない山は、道北の三頭山、ピヤシリ、ウェンシリ、ピッシリ、礼文、嵐山、武華山、武利岳。

 

道東は知床岳、海別岳、北見富士。

 

日高山脈では佐幌岳、剣山、神威岳、ピリカヌプリ、札内岳。

 

夕張山地の崕山と富良野西岳、増毛山地の黄金山。

 

道央ではホロホロ山、尻別岳、定天、八剣山、有珠山、それと道南の横津岳だった。

 

ちょっと気になったので、9月以降の今シーズンにバーっと登ってしまおうと思う。mさんとはせっかくのご縁なので、お互いに北海道百名山を達成できれば良いと思う。

 

私にとってマンネリの打破という位置付けの今回のカムエクは、一定の成果があったのかもしれない。そしてビール片手に書いているこのブログは、次の計画が「思い付き」で終わる可能性も高い。